侍はこうして作られた 〜アクワイア制作2課の660日戦争〜 の読書メモ
1年以上前に読んだ本のメモがあったのでせっかくなのでコピペして晒しておく。
Amazon.co.jp: ゲーム開発最前線『侍』はこうして作られた―アクワイア制作2課の660日戦争: 新 清士: 本
気になったところだけを抜き取ってるので、ストーリー的には伝わらないと思うので読みたい人はヤフオクなりで探して下さい
本の内容を3行で
- 「侍」ってPS2のタイトルを作ったゲーム開発の現場(2002年ぐらいの話)
- その現場に著者(ライターさん)が入って現場の声を聞いた内容のまとめ
- 2行だった
目次
- プロローグ
- 『天誅』の成功と失われる『天誅』
- 『侍』がプロジェクトとして動き始めるまで
- 始まった序盤の開発
- デザイナーチームの立ち上げ
- 立ちはだかる「プレイステーション2」というハードル
- 遅れる三月版
- 六〇フレームへの飛躍
- 固まらないゲームの方向性
- 進んで、進まない七月
- 再度行われる重大な仕様変更
- アルファでないアルファ版
- 運命の九月六日
- チームがチームになる深夜会議
- 始まるデバッグ
- 逆転へ
- エピローグ
メモ
主な登場人物
- 社長
- 兼プロデューサー
- ディレクターさん
- 兼メインプランナー
- あとはいっぱい(30人ぐらい)
- パブリッシャーであるスパイク(現スパイク・チュンソフト)の人
『天誅』の成功と失われる『天誅』
- ゲーム開発の物語はどんなものであっても変わらない
- 毎日キーボードとマウス、もしくはタブレットを使って椅子に座って同じ姿勢を維持したまま現実には存在しないバーチャルな世界に向かって、そしてゲームのマスターアップに向かって果てしなく時間に追われ続ける戦いに明け暮れる
- 当時作ってた『天誅』というゲームについては社長は売れる手応えはなかった
- むしろ不安が強くおもしろいいけるんだと自分に語ってみても、自分自身ははっきりとした自信がなかった
- また、開発スタッフも誰も売れるという自信がなかった
- 開発スタッフ間の感情的な衝突が開発期間中ずっと続いてた
- 海外のパブリッシャーともめる
- マーケティング部門が強い海外のパブリッシャーと衝突
- ゲーム性よりもグラフィックが重視されている方向性であり、自分が考えてたステルス性を重視したゲームとは違ったものがしばし求められた
- 次第に小さなトラブルと不信感を蓄積されていった
- マーケティング部門が強い海外のパブリッシャーと衝突
- 後に天誅のパブリッシャーでありかつ商標権を持ってるソニーが組織改革をしたことによりアクワイアが天誅の商標権が使えなくなった
- ゲーム機のハード性能が向上し、大容量メディアが使えるようになったということは、逆にそれを埋めるだけのコンテンツが必要になる。
- 開発するために開発チームの規模が肥大化していくのを避けられない
- 人数が増えれば、チーム全体が混乱していくリスクも発生する
- ちょっとした開発期間の遅れがすぐにコストに跳ね返る
- 社長はインタビューで以下のように述べてる
- プログラマーとデザイナーを切り分けるとすれば、企画してプログラムを組む。その結果をみてもう一度企画をやり直す。その受け答えが速ければ速いほど、結果は良くなると思うんですよ。
- そのはずなのに施策を作って反応があるまで2,3ヶ月かかってしまう
- その状態を打破するためにはその都度、その都度、あとから修正しなくていいように、偉い選択をするしかないと思ってます
始まった序盤の開発
- ゲームの仕様書はシステムソフトの開発に比べて、書式は一定した形ではない場合が多い。
- ゲームのジャンルが違えば全くことなった立ち振る舞いをしてしまうために統一できない
- ディレクターの場合、初期はHTML形式で書いてたが、後半になってくると口頭や表計算ソフトのチャートなどで書きだすといった変則的なやり方で進められていく
- この変則的な方法がのちに開発後半の切羽詰まってく状況の中で開発現場を混乱させる火種のひとつになっていく
デザイナーチームの立ち上げ
- キャラデザインについて
- デザインは釣りみたいなもので、決まらない時は決まらない
- 「何も参考になるものがないところから、生み出すという作業は本当に苦しかった」
- キャラチームのモチベーション
- リーダーの存在がでかい。リーダーがしっかりとまとめてくれる役を引き受けてくれるので、安心できた
- 常にクオリティのプレッシャーが常につきまとう。嫌ではないけど、大変なものになった。しかし、それを楽しむこともできる姿勢で挑んでいた。
立ちはだかる「プレイステーション2」というハードル
遅れる三月版
- 肥大化する現場の体制
- 大規模化が進む「侍」の体勢に対して不安を感じていないわけではなかった。作るための人数が増えているために、無駄な部分が増えてしまっている
- 「天誅」を開発していた頃のような、デザイナーが1人でやっつけて進められているほうがシンプルで意思決定も早く間違いがない
- どういう組織を作っていけばベストなのか。ゲームそのものが進化していくために、いろいろな方式で試しながら進めていくしかないだろうと社長は思っていた
- 開発が止まる描画エンジン
- この時期にできあがったものについて
- できでは物足りないということが嫌ということわかっていた。
- ゲーム全体の仕様の設計を早期に完成させなければならないということは強く思っていた。
- 机上で設計してきたものと実際に表示されたものは全く違っていた
- 実現性のないスケジュール
- 間に合わせるためには何かを削らなければならない。
- しかし、何を削ればいいのかはっきりいえない
- 仮にボリュームを縮小したとしても、ゲーム開発の最後の行程になるバランス調整のために時間が必要なことは変わらない
- ディレクターは遅れの原因を開発人員がスタート時から揃わなかったことが大きいと見ていた。
- 描画エンジン、Mayaのコンバータツール、スクリプトエディターなどゲームそのものにたどりつくまでの基盤整備に予想以上に時間がかかっていることも響いている
六〇フレームへの飛躍
- 30フレームから60フレームに変えるとアニメーションが確実に滑らかに見えた
- もし、修正するのならデザインチームは作業が発生する
- 主要スタッフを集めて60フレームにするべきかの決をとった
- デザインチームのマップやキャラ等は全部修正しないとだめだが、全員一致で60フレーム化が選択された
進んで、進まない7月
- メンバーのトラブル
- シナリオに意味のない選択肢を入れたいとディレクターは思っていたが、別のライターはかっちりしたものを作りたかった
- どうでもいいことが大切なんだと繰り返し説明したが、納得してもらえず再三衝突
- イベントスクリプトを作っているエンジニアからもトラブル
- とにかく仕様書にまとめてくださいと言ったが、イメージの伝達のできてない
- エンジニアはある程度作ってディレクターに見せたが、それでいいのか悪いのかを彼ら自身に判断できないと感じていた
- ゲームとして何をさあせたいのか全く見えないと感じていたので、すごく強いストレスを抱えていた
- シナリオに意味のない選択肢を入れたいとディレクターは思っていたが、別のライターはかっちりしたものを作りたかった
- ディレクターは、自分が思い描いているイメージを伝達することの難しさを強く感じた
再度行われる重大な仕様変更
- ディレクターが経験した開発の現場は「天誅」しかない。
- その頃のディレクターはだいたいこんな感じで進めてくださいといった、アバウトな指定を行っていた
- あとは個々のデザイナーやプログラマーが判断して作りこんでくれるだろうという無言の前提があったし、実際そういうことを許してくれた
- あるとき、CGの取りまとめをしていたときもデザイナーどうしということもあり意思疎通ができていた。言葉じゃなくて、感覚的に伝えられるニュアンスがあった
- しかし、侍の現場はそれを許してくれることは難しくなっていた
- 過去に一緒に働いてたメンバーは感覚的に理解し、自ら動いて開発を進めてくれた。
- だが、全てのスタッフがそういった形で動いてくれたわけではない。当然初めて一緒に仕事をする人が多い
- その人たちにどうやって自分のイメージを適切に翻訳して伝達すればいいのか、ディレクターは難しい問題に苦しんだ。
- プログラマーからはイメージよりも仕様書の形に整えることを求められた。
- スクリプターやシナリオライターには自分の求めている演出的なイメージを伝えることが難しかった。判断を任せるとできてくるものは自分のイメージとはかけ離れていた
- ディレクター補佐に作業を抱え込みすぎると指摘されたが自分でもわかっていた。だが、段々と自分のイメージから離れていくのを黙ってみていることもできなかった
- ディレクターのジレンマ
- たとえば五人ぐらいで制作して、できあがったものをブラッシュアップしていくといったプロセスが理想だった
- しかし、膨らんできたチームではそういうこともできない。自分が直接コントロールできず、つねに誰かに頼んで制作をして貰う必要があることにいつもジレンマを感じていた
- ゲーム開発のススメ方
- ゲームの本質的な面白さとはなんなのかということを企画の初期段階では、完全に確定させることは難しい
- それを模索しながら、プログラマー、キャラクターなど作業は同時進行で進めなければならない。
- トライ・アンド・エラーで作業を進めていくには、この人数ではもはや不可能だった。やり直しをしている間にスケジュールが圧迫してくる
- そんなときの心境
- 追い詰められていたが、孤独ではなかった。
- チームの各スタッフと一緒に昼飯もよく食べに行った。それがディレクターを支えた
- 「もし、全てのスタッフと本当にコミュニケーションが取れなくて攻められ続けた状況だったら辞めていたかもしれません」
アルファではないアルファ版
- PMが自分たちが危険状態にあることがわかっていた
- ディレクターにもっと大胆な手段を取らねばいけないと主張(つまり、試行錯誤を中止せよという勧告でもあった)
- PMは完全にデスマーチだと思っていた
- 終わらせるという一点に集中させようとディレクターに促していた
- それはクオリティがダメになっても構わないという覚悟だった。
- ゲームのできがひどくても発売できなければ結果はもっと悪い。それまでにかかったコストは完全な損失になる
- それでもディレクターは迷っていた
- あれが足りない、これが足りない、あぁしたほうがいい、こうしたほうがいいという迷いが頭から離れることはなかった
- 心の中には後悔と反省が入り混じった感情はあった。自分に計画性がなく、管理的な意味ではいい加減になってしまっていたという自覚がある
運命の九月六日
- イベントを当初の予定通り全て載せるのはシナリオ的にも時間的にも作業的にも厳しいとメンバーと揉める
- ディレクターは葛藤していた
- 敵はシナリオライターやプランナーではなく「時間」だった
- ディレクターの心はどこかでそれを考えることから逃げていた
- 長い長い数時間の会議が過ぎ、ディレクターは多くの提案を飲むしかなかった。全ては決着へと向かうために受け入れなければならないことはディレクターにもわかっていた
チームがチームになる深夜会議
- 社長が契約社員を集めての契約延期を説明した会議での発言
- 終わりになってその場にいるメンバーに侍の進行状況を聞いてみた
- このままだと終わらない
- プロジェクトがどうなっているかわからない
- なぜ上に対して言わないのか?
- これまで全体状況を説明するミーティングは一度も行われていない。現状がどうなっているのかを知らされておらず、一つの仕事を終了させたにも関わらず次の仕事をしようとしても他が遅れてるので進められないみたいなことがよく起こる
- 進捗MTGでは各セクションチーフはみんな出席しているとはいえ、偉いさん(社長やパブリッシャー)が出席するため、悪い報告がしにくい。
- 本当の意味での現状報告とは違ったものになっていた。
- 会議の雰囲気は悪くなかったが、それは本音を話さないという状態を示す
- 終わりになってその場にいるメンバーに侍の進行状況を聞いてみた
- 問題の本質
- チーム間での情報共有があまりにもされていない。
- コミュニケーションが悪く、どこのチームの作業が遅れると他のチームにどんな影響が出るのかを把握出来てる人間がその場にはいなかった
- すぐに全員を集めたMTGが設定される
- 吹き出す不満。しかし、転回へと向かっていった
- この会議のあと、残っている作業を消化するペースは確実に早くなった
始まるデバッグ
- ディレクターはまだ新しい仕様を追加しようと頑張っていた
- 時間がないなかでできることに限界があることは知りつつも、できるだけリアルタイム性を取り戻そうとする小さな努力でもあった(プレイヤーの動けない時間を減らしたい)
- ディレクターは無理だといってなんでも仕様を削ったり、修正しないことには反対だった。
- その流れを食い止める努力をしなければ、クオリティの上昇は不可能だと考えていた。
- そして、それができるのも自分1人だと思っていた
エピローグ
- 開発現場とゲームの持つ表面的な美しさとの乖離に驚くかもしれない。しかし、ゲーム業界の中でも必死にもがいてる人であればあるほど、こういう物語がどこにでもあることをよく知っている。
- ゲームを開発するというのは、様々な制約の中で小さな選択を積み上げていく作業にほかならない。
- ゲーム制作には夢がある。そう、私はいえる
オレオレメモ
- 本当にどこの現場も似たようなことが起こってる
- 決まらない仕様、突然変わる仕様、仕様書にない仕様などなど
- これがシステム開発とかだったら別だろうけど、ゲームというやろうと思えばいつまでも膨れ上がるものかつ作ってみてダメだったら作りなおすから仕方ないとは思う
- 決まらない仕様、突然変わる仕様、仕様書にない仕様などなど
- 登場人物が豊富で前職で何してたとか、何が理由で辞めたとかいつも数行書いてて面白い
- 60フレームに変えるところで全員一致ってところが印象に残った
- 手間かけてまでもユーザーにいいものを届けたいという思いがあると思う
- ディレクターしつつ、メインプランナーはかなり無理があるように思う
- 本書はディレクターであるディレクターさんの葛藤がかなり出てきて、共感できる部分もあったがやはりそこは決めて言ったからには進めてくれよと思うことのほうが多いように感じた
- 人間関係が崩壊してたら本当にダメになってたと思う。ランチコミュニケーション大事
- ディレクターと現場の対立が強烈に出ていたが、向いてる方向が違うためこれは解消できない気がする
- ディレクターとしては面白いゲームを作って市場にインパクトを与えたいとか大きな目線
- 現場は目の前の作業を日程までに終わらせることに主眼をどうしてもおきがちなので交わることはない気がしている
- こうしてみるとディレクターは孤独な職業なのかもしれない
- やりたいことの理想と現実が違うギャップを埋めるために全力投球するが、現場から突き上げてくる現実と戦う毎日。
- コンシューマゲームエンジニアすげぇな…。
- ゲームエンジン作るとかパネェ
- UnityとかCocosってそう考えると楽だなぁ…。
- メモリの計算周りとか見てると低レイヤのところまでわかってないと作れないんだろうなぁ